K 医療・福祉・雇用政策

1、超高齢社会を支える社会保障制度を確立する


1.問題意識

 日本は世界でも突出して急激なスピードで超高齢社会が進行している。出生児数の減少に歯止めがかからず、若い世代の減少が続くことで、国力の衰退が懸念される。日本人の優れた特質である勤勉性と助け合いの精神を基本にして、安定した社会保障制度を確立することにより、活力ある超高齢社会の実現を目指す。


・ わが国は、経済成長の中で一人当たりの国民所得を向上させてきた。しかし、近年の景気低迷と雇用の不安定性、さらには高齢者の増加も加わり、生活保護受給者が戦後最大だった昭和25年を上回る200万人の水準になってきている。

・ 社会保障制度の基本的な考え方は、まず国民一人ひとりが自らの責任と努力で生活する「自助」が基本であるが、個人の責任や自らの努力だけでは解決できないリスクに対応するために、「共助」のシステムとして雇用保険や皆年金制度等の社会保険制度がある。自助、共助によってもなお対応できない場合に、生活保護による「公助」が最後のセーフティネットとして機能する。その意味では、安易な生活保護の支給は、逆に受給者の能力を生かし尊重することにならないのであって、働くことを支援するための就労支援制度をまず機能させねばならない。

・ 超高齢化社会への対処が求められる中で、社会保障制度を政争の具にすることなく、社会保障制度に対する国民の信頼を回復することが極めて重要である。

・ また、老人だけでなく次代を担う子供への支援を充実し、少子化の流れを反転させなければならない。


2.政策の展開

 「自助を基本とし、共助・公助が補う安心の社会づくり」を基本にした政策の推進をはかることが必要であり、党派を超えて、高齢化がピークを迎える2050年を見据えた社会保障制度の再構築を行う。


・ 国民一人ひとりの自立を前提に長い老後を安心して暮らせる社会保障制度を確立する。その中で、高齢者の知恵と力を積極的に社会の支え手として生かすシステムを構築する。

・ 受益と負担のあり方を国民に説明し、急激な高齢者増に伴い必要となる財源の確保と、制度のあり方について論議を深める。あわせて、子育て世代を支援する税と社会保障を充実する。

・ 社会保障制度は、まず成人は働くことを基本に、それができなくなった場合のセーフティネットとして運用されるべきであり、国民一人ひとりの能力を活かし就労につながる支援策を充実し、生活保護からの脱却をすすめる必要がある。

ただし、本来受けるべき者が生活保護を受けられない事態は当然防ぐべきであり、昨今の「孤独死」のような事態が起きないよう、必要な制度の改善を進める。


2、医療・福祉制度を確立する


1.問題意識

 わが国の国民皆保険制度は、国民に世界最高水準の医療の受診を可能にしてきた原動力である。しかしながら、世界に類例がない長寿社会を実現した誇るべき制度も、医師不足や財源のひっ迫で深刻な状況に陥っており、早急な対応が求められる。

こうした中でも、日本の高度医療と日本発の創薬は、日本をけん引する有力な産業であり、これらの財産を活かす取り組みが必要である。

また、超高齢化の進行の中で、要介護者が増加しており、介護ニーズにこたえるとともに、ますます必要になってきている出生児の増加を目指した子育て世帯への支援の充実が必要である。


・ 誰でも必要な医療が受けられる国民皆保険制度を維持し、国民の健康を守る。

・ そのため、医療・福祉のあらゆる分野における人材不足、労働環境、賃金の見直し、高齢者の増加、過疎化の進展に対する地域・在宅ケアの問題、複雑な介護体系の問題等を抱えており、その具体的な解決策が求められる。

・ 特に介護保険制度については、公費負担や財政状況の悪化等による変則的な制度設計となっており、この制度の維持のために、費用が膨大にかかる支払基金業務が必要となっており、国民の理解を得るべく分かりやすい制度に見直すことも課題になっている。

・ また、国民一人が生涯に使う医療費の半分が死の直前の2か月に使われているとの統計があることからも、医療経済的な観点から、「尊厳ある生」と「尊厳ある死」について国民全体で考えてゆかなければならない。


2.政策の展開

 国民皆保険制度を維持し、良質な医療提供体制を守るため、必要な財源を確保し、医師の地域的な偏在や診療科ごとの編在を解消するための方策を講ずるとともに、「かかりつけ医」の普及、終末期医療のあり方の見直し、介護従事者の確保、在宅医療・介護サービスの充実を進める。


・ 具体的に医療の現場で生じている、医療の診療科目の編在、医療の地域格差、女性医師の復帰、勤務の過重による看護師の離職や不足、看護師の届け出の義務化、看護師特定能力認証制度、ナース・プラクティショナー制度、介護分野における人材の確保、在宅ターミナルケアの実施、要介護制度区分と要介護認定事務の簡素化、介護サービス体系の簡素化、施設介護における入所待機者問題の改善、地域包括ケアの再構築等への具体的対策を実施する。


3、雇用の安定をすすめる


1.問題意識

企業経営の合理化・効率化と、さらにはそれを徹底させるための安い労働力を求める海外進出で、これまでのわが国の企業経営と雇用関係の基本となっていた終身雇用・年功序列という日本型の雇用慣行が変質し、非正規雇用者が増大する等、安定した雇用の確保に支障が生じ、所得格差も拡大している。

このことは、社会の変化、生活の多様化の中で働く者の意識の変化が雇用の形態を変えてきている側面も大きいが、改めて、働くことの意義を考え直すことが求められている。


・ 新規学卒者の就職が厳しいため、大学生活を学問よりも就職活動に費やし、就職の失敗に大きなダメージを受ける若者がいる一方、安易な離職を繰り返す者もあり、キャリア教育の充実と職業能力を高めるための支援の強化が求められる。

・ 今後、労働力人口は減少していくため、健康で勤労意欲の高い高齢者の活用と女性労働力の活用が不可欠である。

・ 求人と求職のミスマッチに加えて、フリーターなどの不安定雇用が安定した生活を営むことを阻害している実態や、使用者の解雇権に強い制約が課されていることが正社員の採用の抑制につながっていることなど、雇用をめぐる多面的な問題や働くことの意識の変化が生じている。

・ まさに、「働く」ことを通じて社会に貢献し、自己実現してゆく意識の醸成が大切である。そのため、家庭や学校において勤労の価値を認識させ、自律心を養う「教育」が必要である。

2.政策の展開

 就労意識の多様化を踏まえ、多様なニーズにこたえる雇用の受け皿を用意する。企業側としても、経営の効率化合理化の観点からの、労賃の切り下げを目的にした非正規雇用の拡大ではなく、企業を支える「人材」として資質の高い社員を育てるという、働くことの意義を重視したものにしてゆく必要がある。


・ 例えば、農林水産業、製造業からサービス業への雇用の受け皿が変化する中、その変化に対応できない者へのきめ細かな対応策として、職業訓練の充実、再就職への支援策を講ずる。

・ また、失業給付の低減方式の導入により、早期に就業することにインセンティブをもたせるとともに、新卒者のトライアル雇用、学生インターンシップの拡大により、マッチングの検証を使用者、被用者の双方で行う。

・ ハローワークの就職あっせんを拒否したら給付を減額する仕組みの導入や、現金給付から現物給付へと、就労することのインセンティブがはかれる制度を導入する。

・ 現在、慣例となっている新卒者の新規採用の条件を改め、30歳程度まで新採の枠を広げる。


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